これほど素晴らしい学者でありながら、ゲーデルの伝記は見当たらず、数学、物理を専門としない一般の人にはあまり知名度も高くないようです。 第1章では淡々とした文章の中にゲーデルの人となりが紹介されています。ゲーデルは有名な人間嫌いで、お世辞にも社交的とは言えない性格であったようです。 几帳面で研究一筋のゲーデルの最愛の夫人は、彼がウィーン大学在学中に知り合った6歳年上の酒場のダンサーでした。親の反対もあり実際に結婚したのは出会ってから11年後のことでした。 客観的にはこの二人のギャップは大きいように思いますが、「不完全性定理」が認められた時に、ゲーデルは「あなたが私に人生の喜びを教えてくれたために、私はこんなによい定理を発見する事ができた」と言ったそうです。 アインシュタインの相対性原理の解釈や、数学を越えて哲学にも大きな影響を及ぼしました。ゲーデルの業績について、プリンストン研究所時代のノイマンの賛辞の一部を示します。「ゲーデルが実際に証明した定理は、数学だけに関係したものではなく、現代論理学の言葉で形式化しうる、すなわち厳密で徹底的な記述をもった全ての体系についてのものなのです。つまりそのようなどんな体系であっても、内部矛盾していないことを、その体系自身の方法では示すことができないのです」 また、日本の数学者、論理学者で、ゲーデルが心を開いた数少ない人物であった竹内外史氏は、 「私にとって彼ほど心のやさしい、学問的に公平無私で、深くて広い人を知らない。たいていの人が自分の業績にいちばん都合の良い哲学をもちがちであるが、彼にはそういうところがぜんぜんない。・・・これほど学者という名に値する人を私は知らない」 ゲーデルが生前に発表した論文は30弱であり、渡米してから出席した学会はアインシュタイン賞受賞時の一回だけ。但し、彼の残した膨大な研究ノートはプリンストンとウィーン大学に残されているようです。そして、1978年1月14日にプリンストンのメディカルセンターで椅子に座り書き残した数ページの数式が絶筆となりました。その後、夫人はプリンストン近くの養老院に入り、今はゲーデルと同じお墓に眠っております。 ノイマン、アインシュタイン、ラッセルなど有数の数学者、物理学者から敬意をはらわれ、偉大な業績を残した天才学者クルト・ゲーデルの生涯を多少なりとも知ることができた素晴らしい一冊です。
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